
「最近、笑わなくなったね。」
「最近、笑わなくなったね。」
夫は、本当に何気なく言いました。
責めるような言い方ではありません。
心配してくれていることも分かっていました。
でも、その言葉だけは返せませんでした。
私は笑っているつもりでした。
仕事では笑う。
友達と会えば笑う。
テレビを見て笑うこともある。
それなのに、
その日の夜、洗面所の鏡を見た時、
ふと思いました。
最後に心から笑ったのは、いつだろう。
思い出せませんでした。
少し病院へ通うだけだと思っていました。

不妊治療を始める前。
私は、
「少し病院へ通うだけ。」
そんなイメージをしていました。
薬を飲んで、
検査を受けて、
先生の話を聞いて、
少し頑張れば、
赤ちゃんは来てくれる。
そう信じていました。
でも、
気づけば毎日が、
病院を中心に回るようになっていました。
朝起きると、
最初に見るのは天気ではありません。
カレンダーでした。
帰り道だけは、泣いていました。

その日も、
いつも通り診察を終えて帰るだけでした。
会計を済ませて、
薬を受け取り、
いつもの道を歩く。
信号待ちをしていると、
向こうから、
ベビーカーを押した夫婦が歩いてきました。
赤ちゃんが笑っています。
お母さんも笑っています。
お父さんも笑っています。
私は、
目をそらしました。
見たくなかったわけじゃありません。
ただ、
その景色が少し眩しすぎました。
家に帰ると、
夫が聞きました。
「今日どうだった?」
私は笑って答えました。
「大丈夫。」
その一言だけでした。
本当に欲しかったのは、答えじゃありませんでした。

その夜、
眠れなくてスマホを開きました。
検索したのは、
「不妊治療 つらい」
でした。
たくさんの記事が出てきました。
費用。
検査。
薬。
病院。
どれも間違っていません。
でも、
私が知りたかったのは、
そんなことじゃありませんでした。
私は、
「私みたいな人は、他にもいるの?」
その答えが欲しかったんです。
「私だけじゃなかった。」

しばらくスクロールしていると、
一つの体験談が目に入りました。
その中の一文だけ、
今でも忘れられません。
「友達の妊娠報告を見るたびに、私は笑えなくなりました。」
その瞬間、
涙が止まりませんでした。
私は、
その人に会ったこともありません。
名前も知りません。
でも、
その一文だけで、
救われました。
「ああ。」
「私だけじゃなかった。」
そう思えたからです。
あなたにも、そんな日が来ますように。
治療が終わったわけではありません。
悩みがなくなったわけでもありません。
でも、
その日から少しだけ、
前を向けるようになりました。
もし今、
この記事を読んでいるあなたが、
同じように笑えなくなっているなら。
どうか覚えていてください。
あなたは弱いから泣いているのではありません。
それだけ、
大切な命を願っているからです。
そして、
この記事が、
あなたにとって
「私だけじゃなかった。」
そう思える場所になれたなら、
それがベビたんノノにとって、一番うれしいことです。

