病院へ行ったら、不妊を認める気がした。

予約画面までは、何度も開けました。

病院を探すことはできました。

口コミも見ました。

先生のプロフィールも読みました。

診療時間も確認しました。

でも、

最後の「予約する」だけは、

どうしても押せませんでした。


押した瞬間、全部が本当になる気がした。

もし予約をしたら。

もし病院へ行ったら。

もし先生に、

「不妊ですね。」

そう言われたら。

その瞬間、

私は、

「赤ちゃんができにくい人」

になってしまう気がしていました。

もちろん、

病院へ行かなくても現実は変わりません。

でも、

病院へ行かなければ、

まだ希望だけを信じていられる。

そんな気がしていました。


「まだ大丈夫。」

私は、その言葉を何度も自分に言い聞かせました。

「もう少し様子を見よう。」

「今月できるかもしれない。」

「病院はまだ早い。」

気づけば、

半年が過ぎていました。


本当は、病院が怖かったんじゃありません。

怖かったのは、

病院じゃありません。

診察でもありません。

検査でもありません。

現実を知ることでした。

「原因があります。」

その一言を聞く勇気がありませんでした。

だから、

予約ボタンを押せなかったんです。


でも、ある日気づきました。

予約をしない限り、

私は毎月、

同じことで悩み続けるんだ。

期待して。

落ち込んで。

また期待して。

その繰り返しなんだ。

そう思った瞬間、

初めて予約ボタンを押しました。


病院へ向かう朝。

電車の中で、

何度も帰ろうと思いました。

「今日はやめよう。」

「来月でもいい。」

そんなことばかり考えていました。

病院へ近づくたびに、

足が重くなりました。


先生は、私を責めませんでした。

診察室に入ると、

先生は、

「今日は来てくださってありがとうございます。」

最初にそう言いました。

私は、

その一言だけで泣きそうになりました。

私は、

勝手に思い込んでいたんです。

「もっと早く来ればよかったですね。」

そう言われると思っていました。

でも、

先生は一度も責めませんでした。


あの日、一番変わったのは結果ではありません。

その日に、

妊娠したわけではありません。

治療が終わったわけでもありません。

でも、

一つだけ変わったことがあります。

「分からない」という不安が、少しだけ小さくなりました。

病院へ行く前は、

何と戦っているのか分かりませんでした。

でも、

病院へ行ったことで、

ようやくスタートラインに立てた気がしました。


あの時の私へ。

もし、

今の私が、

予約ボタンを押せずにいるあの日の私へ一言だけ伝えられるなら、

こう言います。

「病院へ行くことは、不妊を認めることじゃない。」

「未来を諦めないための、一歩だよ。」


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